世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への解散命令請求についての私見
2023-10-30


文部科学省による今回の世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への解散命令請求(2023年10月12日)は、文化庁宗務課が宗教法人法における質問権を行使して、民事訴訟案件の精査、被害者などからのヒアリング、被害者救済に携わっている弁護団などからの情報収集など、時間をかけて判断材料を収集し、慎重に検討した結果であると考え、その判断を尊重する。最終的には裁判での決定を待たなければならないが、行政府としては、旧統一教会は宗教法人としての資格に欠けると判断したことは重大なことである。宗教法人でなくなったとしても宗教活動は続けられるが、宗教団体としての適格性、適切性への疑問が公的についたことになる。今後は、解散命令が実際になされた場合に備えて、教団財産の海外移転や国内移転が違法になされないような措置を早急に進めることが、政治の責任となる。国内の関連団体への財産移転も厳しく監視されなければならないが、休眠宗教法人を買い取り、そこへ贈与する手法などもあり得るので、まさに要注意である。

今回の請求は、従来の要件であった教団や幹部の刑事事件だけでなく、民法の不法行為にまで拡げて検討したことが重要だ。これは解散命令請求の要件を低くしたことになり、今後、同様の命令が出しやすくなった。しかし、この点は両義的だ。宗教法人法の主たる目的が「信教の自由」を法的に保護、担保するために法人格を付与する点にあったが、1995年にオウム真理教事件を受けて改正された同法には報告徴収・質問権が導入され、国による管理が強化され、今回の事例によって宗教法人法の性格がさらに変化し、国による監督権限の強化に繋がりかねない。宗教法人の自立的運営に行政が介入しやすくなる前例となった。その点を強く懸念するが、今回は2009年のコンプライアンス宣言後も問題が組織的に継続していることを確認した上での判断だと評価する。

問題は、この請求のために集めた材料や判断基準が非公開、不明であることであり、裁判所での審理も非公開で行われる。信教の自由が侵害されないためにも、裁判の公開、主たる判断資料の公開が望ましい。また安倍晋三・元首相はじめ自民党などの議員と旧統一教会との関係が今回の事件を契機に白日の下にさらされ、関係した党や議員は関係を清算するとしたが、実際は曖昧なままである。ゆえに、この請求をもって問題に蓋をしたり、関係議員の言い訳材料となってはならない。1980年代のいわゆる霊感商法が大きな問題になったとき、なぜ適切な捜査、規制ができなかったのか、それをストップさせた政治との繋がり、さらに今回、民法の不正行為にまで拡げて解散命令請求に持ち込んだ裏にある政治的思惑なども、引き続き解明されなければならない。

宗教団体を法令などで規制できるのは子供や他者への人権侵害や過度の献金による家庭崩壊などの外形的事実であり、今回の請求は、その外形的事実における過度な違法性は、たとえ宗教団体であろうと認められないことを明確にした。旧統一教会のような新宗教は、教団の主たる収入を信徒の寄附、献金に依存する度合いが高いので、借金による献金や生活保護世帯など生活弱者への献金強要などがあってはならない。伝統的な仏教寺院においても、過度な布施や戒名料の請求、開運商法や宗教法人売買などに関与している例もあり、集金の適切なあり方を宗教界全体が常に問い直す必要がある。

「政教分離」「信教の自由」を謳う現憲法下では、司法や行政は宗教的信念や教義の規制・監督には踏み込めない。しかし高額な献金をすれば先祖の怨念が解かれるとか、先祖の霊が成仏する、または宿命が転換できるなどを宗教的教義として主張する集団には、国民自身や社会が賢明な判断力をもって対処、対処しなければならないのはいうまでもない。献金によって救済される宗教など、宗教の名に値しないと筆者個人は考えている。

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