アメリカSGIについての最新研究2書への書評
2019-06-11


秋庭裕『アメリカ創価学会<SGI-USA>の55年』新曜社、2017年11月。
川端亮、稲場圭信『アメリカ創価学会における異体同心―二段階の現地化―』新曜社、2018年1月。


この2書への書評を公開します。簡略版は『宗教と社会』第25号(2019年6月8日刊行)に掲載(139-142頁)されました。紙面の字数が限られていたので、本稿は加筆した内容になっています。
なお同誌上には、拙書評に対する著者からのリプライが掲載されているので、参照されたい。現地での調査でGMWの「発見」が困難であったことなど、数知れない苦労があったことが窺われます。

本書評のpdf版は、下記からダウンロードできます。
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1.はじめに
両書の著者3名は、2005年8月から2015年3月まで10年をかけて、ハワイやロスアンゼルス、ニューヨーク、シカゴ、マイアミ、ボストンのアメリカ創価学会(以下、アメリカSGI、またはSGIと略記)の会館などを計15回訪問し、70人以上のメンバーにインタヴューを行うなど、アメリカSGIについての長期にわたる調査を行ってきた。両書はその果実であり、アメリカ創価学会の展開を綿密かつ包括的にとらえた刮目すべき研究成果である。また両書は、学問的基礎を踏まえながらも、一般読者とくに多数の会員に読んでもらえるよう平易かつコンパクトに記述することを心がけたと聞いている。
評者は特に、著者たちの「内在的理解」と「濃密で開かれた記述」に基づく分析(秋庭vi)というライフヒストリー法をさらに発展させた学問的方法に注目し、SGIメンバーの信仰のリアリティーがどの程度描き出され、運動の全体的世界が解明されたのかに深い関心と期待を抱いて読み進めた。
両書の内容を詳細に紹介することはできないので、評者の関心をひいた箇所を中心に以下に目次と概要を記す。

2.秋庭裕『アメリカ創価学会<SGI-USA>の55年』の概要
 はじめに
 第1章 ハワイから西海岸へ
 第2章 成熟から停滞へ
 第3章 波濤を越えて―アメリカと日本―
 第4章 広布千年の基礎
 おわりに アメリカ社会と日蓮仏法―その親和性―
 あとがき、注、参考文献一覧

 秋庭氏の本書は、1960年10月の池田第三代会長による初の訪米から2015年にいたるアメリカ合衆国での創価学会55年の通史であるが、時代の変化に影響される日本とアメリカとの社会および創価学会自身の相互関係を視野に入れつつ描いたダイナミックな記述となっている。またその過程で運動の牽引役となった池田大作第三代創価学会会長やジョージ・ウィリアムス理事長(以下、GMW。日本名・貞永昌靖)などリーダーの主張、また信仰に邁進したメンバーの姿をリアルに描きだそうとしている。
 第1章は、池田が会長就任の半年後、初の海外指導としてアメリカに向かった1960(昭35)年から70年代初頭にかけてのアメリカSGIの活動を、背景として全米に起こった公民権運動、ベトナム反戦運動やヒッピーなどの対抗文化運動と関連させつつ描いている。
知る人ぞ知るエピソードだが、池田がホノルル空港に到着した同年10月1日深夜、出迎えたのは22歳の青年トミー・オダただ一人だった。日本からの連絡ミスで生じた出来事だが、やがてハワイ文化会館の初代事務長になるオダの数奇な人生を、初期の日系移民の歴史との関連で詳細に追いかけた。アメリカSGIの初期のメンバーはオダのような日系移民と太平洋戦争後に渡米して苦労した戦争花嫁によって始まった。本書はこのようなメンバーのリアルな人生を丹念に追いながら、信仰との関連を解明しようとしており、その手法の有効性が感じられる。

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