全体は三部構成となっている。
第一部「アメリカおよび連合国による占領と戦後処理―日本本土と日本人」では、近年の研究や、新史料、英国公文書館所蔵の英国外務省記録などをもとに、米国および連合国の日本占領をあらためて捉えなおす。
第二部「南西諸島の戦時と戦後」では、南西諸島の歴史的・宗教文化的特性をとらえなおし、歴史的・地理的に特殊な場所であった奄美・沖縄諸島の戦時、占領、戦後における宗教政策等について検討する。
第三部「日本の占領地・旧植民地統治と戦後」では、韓国、台湾、ミクロネシア、インドネシアなど日本によって統治・占領が行われていた地域の日本の宗教政策の実態、そして戦後の状況について考察する。
序論においては、本書刊行にいたった上記の経緯に加え、そもそも前大戦後の日本占領が連合国のいかなる命令と軍事組織によって実施されたのかを簡潔に整理し、日本がドイツのように分割占領される危険性があったこと、「無条件降伏」という概念が、軍事的降伏だけでなく、政治・経済・イデオロギー等にわたる「相手国の内的秩序の全面的再編」を求める「文明の改革」であったことなどを明らかにしている。また所収の各論文の要点と意義を簡潔にまとめてある。
各論文のほか、付論として岡ア匡史「日本占領と公文書」、粟津賢太「解題―「占領と宗教」研究における一九九〇年代以降の動向」の二論考を収録した。岡ア論考では、敗戦直後の日本で戦時期の重要史料を精力的に蒐集した米スタンフォード大学フーヴァー研究所の出先機関「東京オフィス」を紹介し、その史料群の重要性を明らかにしている。またフーヴァー研究所をはじめとする米国の日本占領に関連する諸アーカイヴにどのようなコレクションがあるか詳細に紹介している。
粟津賢太「解題」では、研究史の動向をアメリカのアーカイヴや日本の国会図書館、沖縄県公文書館などのアーカイヴから、憲法改正関連、国籍別の差別問題、ジェンダー・女性史関連、慰霊・追悼、国家神道関連など分野別に詳細に分析し、その進展を明らかにした。神道関連ではウッダードの研究が日本人によって歪められた経緯が指摘されている点は重要である。さらに日本の占領方式が、「当該国を軍事的に占領した連合国が排他的な実験を握るとした「イタリア方式」と、ドイツに対する「無条件降伏」「非ナチ化」など当該国の哲学まで破壊する「相手国の内的秩序の全面的再編」を目的とする方式が先例となっていることを明らかにしている。「非ナチ化」という発想は、今世紀のアメリカによるイラク占領では「非バース党化」として提言され、二〇二二年のプーチン・ロシアによるウクライナ侵攻に際して再び使われた。
セコメントをする